おりおりに 出逢った      「すきなもの」を      縦横無尽に ご紹介
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魂に応える意志


今日 ある新書を読み終え、

ふと目に入った巻末に記されていた 「刊行にあたって」の文章です。
その後半世紀を経ても 当時憂慮された状況は変わっていないように見えますが、
魂に生じる知への情熱は ここに記された意志に応じるかのように
それぞれの人の中でふつふつと静かにたぎり ほとばしるときを待っているように観じます。







      教養は万人が身をもって養い創造すべきものであって、
      一部の専門家の占有物として、ただ一方的に人々の手もとに配布され伝達されうるものではありません。

      しかし、不幸にしてわが国の現状では、
      教養の重要な養いとなるべき書物は、ほとんど講壇からの天下りや単なる解説に終始し、
      知識技術を真剣に希求する青少年・学生・一般民衆の根本的は疑問や興味は、
      けっして十分に答えられ、解きほぐされ、手引きされることがありません。
      万人の内奧から発した真正の教養への芽ばえが、こうして放置され、むなしく滅びさる運命にゆだねられているのです。

      (略)単なる博識以上の根強い思索力・判断力、および確かな技術にささえられた教養を必要とする日本の将来にとって、
      これは真剣に憂慮されなければならない事態であるといわなければなりません。

      わたしたちの「○○○○○新書」は、この事態の克服を意図して計画されたものです。
      これによってわたしたちは、講壇からの天下りでもなく、単なる解説書でもない、
      もっぱら万人の魂に生ずる初発的かつ根本的な問題をとらえ、掘り起こし、手引きし、
      しかも最新の知識への展望を万人に確立させる書物を、新しく世の中に送り出したいと念願しています。
      (略)


      一九六四年四月