おりおりに 出逢った      「すきなもの」を      縦横無尽に ご紹介
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わきたつ地と熱











昨日

「遠くて近い 井上有一展」



行ってきました




この春

あるお店で

井上有一さんの「菜の花」という書を観たときの

痛烈な印象が

けっこう なまなましく残っていたので、

「菜の花」の書を一緒に観た 彼の書が好きだという友人から

展覧会への誘いがあったとき

しばらく悩んだものの、

好き嫌いを超えて

なにか鮮烈なものを孕む

彼の存在に

あらためて触れてみようと思ったのでした















彼の書に出逢ったのは

今年の春だとばかり思っていたのですが、

前日

展覧会へ行くことを伝えた家人から

既に出逢っていたことを

知らされました







あれは確か

1993年の夏のこと




文化人類学者の山口昌男さんが

廃校を利用して始めた

「喰丸文化再学習センター」の開所祭




福島県昭和村の喰丸小学校の体育館



天井から吊り下げられた

何枚もの

「貧」




冒頭の写真が

それです




ほとんどの写真を処分したときの

選別をくぐり抜けて

幸いにも

手元に残っていました

相撲の廻し姿の山口さんのお尻の写真
処分してしまったのは もったいなかったなぁ…)





改めて見ると

ちゃんと

「井上有一」

という字が

したためられた一枚も




一緒にそのイベントに参加した家人が

そう言うのですから

そのとき

井上有一さんのことが

紹介されたのだと思います

が、

私の記憶には

まったく

とどまっていませんでした




ただ、

地域の小学生が描いたのだろうと思っていた

「貧」



文字



個別の形や存在は記憶になくとも

その文字がかかっていた時空の

空気感のようなものは

ずっと

覚えていたのでした







昨日

あらためて出逢った彼の書は

文字という

“通常の規定の枠”を突き抜けた

ひとつの存在

でした




「表現」

というような

意図をわずかにでも含む行いすら超えた

おのずから

噴出するエネルギー




会場の入り口に掛かっていた

「月山」







まるで

この週末に訪れた

火山島の

溶岩

のようでした




マグマのエネルギー

地球の熱




いま読んでいる本には、

無機物・有機物を問わず

非生物・生物を問わず


地球の進化は

地球の熱の放出による「エントロピーの減少」

によってもたらされている

構造の秩序化である、

という説が

提示されています




「死」

という





エントロピーを小さく保つ生命の営みが

最期を迎えたとき

微生物によって分解され

熱力学第二法則に従ってエントロピーが極大となり

大気や大地へと還っていく

プロセスそのもののようでもあり、

また

一本の腸だけだったとされる

初期の脊椎動物



うごめきのようでもありました




そういえば

井上さんが亡くなったのは

1985年6月15日


私たちは

命日のすぐ後に

展覧会へ伺ったようです




「死」




会場の撮影はできなかったので

書そのものを

ここでお見せすることはできないのですが

(カタログを買っておけばよかった…)

他のサイトから

似た書を見つけることができました









こちらのサイトからお借りしました>







これは

「恵」


という書




もう一枚

似た雰囲気を持つ書がありました









こちらのサイトからお借りしました>







こちらは

「老」

という書





死と恵と老



似ている

というのは

とても興味深いです




最後は

昨日の展覧会にはなかったのですが

一緒に行った友人が好きだという文字

(この書が好きかどうかは不明です)









こちらのサイトからお借りしました>







特注の太い筆を抱きながら

あるいは

コンテを握りしめ 声に出しながら

全身を投げ出して

紙に向かう

井上さんの姿に、

いのちとカラダとコトバと音と動き



一体となってあらわれる

「ことば」



素のままのすがた

原初のすがたを

あるいは

エントロピーが極大の混沌の世界から

創造という営みによってエントロピーを減少させる

いのちの事場[=ことば]

というものの成り立ちを

観ることができたのが、

私にとって

今回最大の恵みでした
















【余 談】


アップルのトップページから消えていた

「その時がやってきた」



文字



展覧会から戻ってパソコンを開くと

再び

トップページに戻ってきていました