おりおりに 出逢った      「すきなもの」を      縦横無尽に ご紹介
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アジール







昨日

出かけた先では

お祭りが行われていました




主要な神社がそうであるように

この社も

縄文海進のときは

海を臨む場所だったところ

陸と海の境界だったところ



あります




林立するビルの谷間に

エアポケットのように

あり続ける

社の空間は、

日常の時空を異化する

異次元のような場所です




陸と海をつなぐ場所

日常と非日常をつなぐ場所

此岸と彼岸をつなぐ場所

“ここ”と“ここではないところ”をつなぐ場所




つい先ほどまで

橋の話を聞いていたことを思い出し、

どちらも

異なるものを

つなぐ

はたらき

があるなぁ



次第に濃くなる

透き通った

空のあお



しばし

眺めていました









よいみやの

ともしび

うかぶ

しぶやがわ

きしからきしへ

ながれの

きよき








かつて青山台地は、人間の舌のかっこうをした大きな「岬」として、

足許に海水を受けていた。

そして、

芝や三田の高台と同じように、

ここは古代からの大きな埋葬地だった。

いまの青山墓地の南西部の、

少し傾斜のはいったあたりが、

もっとも古い埋葬地の跡を示している。


(略)


青山の台地は、

死霊の支配する「自由」の空間なのである。

ほんとうのことを言えば、

この空間の中にいるかぎり、

世の中の人が普通にはどういう格好をしているだろうかとか、

どういう考えをしているだろうかとか、

そういう保守的な考えには、

いっさい縛られる必要がないのである。

「自由」の空間は、

こうしてファッションの生まれる創造的な空間となる資格を持つのである。


(略)


青山墓地でシャクジンが発見された。

ぼくはそのことにいたく感動するのである。

これは神様たちの国家管理ということがはじまるはるか以前から、

この列島に住んでいた「古層の神」の代表である

シャグジ(宿神、石神)という神様のことをさしている。

この神様は胎児の姿をして、

胞衣(えな)に守られて人の目に見えない空間に住んでいる。

シャグジの住んでいる空間は、

現実の世界の影響が及んでこないようになっている。

そのために、

この空間の内部はまったくの自由がみちあふれていた。


(略)


青山墓地を中心とした死霊の支配するその空間には、

業界人が好んで住んでいる。

ファッションメーカーの事務所やショップも、たくさんある。

そして、

そこからつくりだされる現代ファッションは、

根も葉もない自由をこそ生命としているのである。

現実のしがらみの強い土地、

たとえば霞ヶ関の近辺などでは、

ファッションの想像力はさぞかし生きにくいことだろう。

ところが、

青山はシャグジの神様の祀られていた、

死霊の住まう自由の「アジール」なのである。

そこにいれば、

業界人たちも自由に息ができる。



東京にも地霊は生きている。

青山界隈の真実の支配者は、

シャグジの神様なのである。



(中沢新一・著『アースダイバー』P.160〜P.165)