あと/TRACE
TRACE < PIE root tragh- “ to draw, drag, move ”
*
Cという字は円周の一部をなしている。
それは完全に閉じた円周ではなく、右側に開口部があり、
来たるべきものの方に開いているように見える。
この開口部は、
卵が割れて中から新しい生き物が世界の発見に乗り出すように、
囲いの外に出る可能性をあらわしている。
こうしてアレフ(ALEPH)に含まれていた精気と創造力は、
ベート(BETH)があらわす家にしばらく住んだあと、
束縛を断ち切って外界へ飛び出してゆく。
このイメージは、
この世に生まれて泣き叫ぶ新生児の大きく開けた口のイメージにもつながる。
また、Cの後につづく文字の解釈とも響き合う。
つまり、
扉としてのD(母胎から出ていく)、
息を思わせるEとF(肺に空気を吸い込む)、
そして人間の完全な自立を示すGである。
<ローラン・プリューゴープト著『アルファベットの事典』より>