どうき
坂本: 我々が普段何気なくやっている動作、
たとえばお酒を飲むときにお猪口をもって、口に持っていきますよね。
このなかに、ものすごい力が込められている。
腕の力を使って意図的に行うのでは到底及ばないくらいの力が、
我々が無意識に物を動かすときには生まれている。
竹村: なるほど、なるほど。
坂本: すごい怪力の男に、こう腕をつかまれたとして、それを離そうと思っても
絶対離れないですよね、向こうの方が強ければ。
ところが、お猪口を持つような感じで自然に手をあげたとすれば、
簡単にあがっちゃうんですよね。
これはとても微妙な身体感覚で、普通に言うアスレティックな運動感覚とは違う。
そういう気づきっていうのかな、自分の身体の隠れた次元、隠れた能力に気づくこと。
それがいかに天と地につながっているか、同じ力が支配しているか、
っていうことに気づくかどうかだと思うんです。
竹村: 大事なのは、自分の意図で持ち上げて、自分のなかで完結するメカニズムじゃない
ってことですよね。
物体でも他者でも、その対象との関係のなかで、ある秩序がそこで形成される。
その関わりが調和的にコーディネイトされ、同期していると、
誰の力も使わない、というか自分の力を超えた力が働く。